2023年の9月から、スペインの公立の語学学校、EOI(Escola Oficial d’Idiomes)のVall d’Hebron校に通いました。9月から1月までの前期タームが終了したので、学校の様子などをまとめたいと思います。
EOIの申し込み方法については、こちらの記事で詳しく書いています。
学校の設備
カフェテリア
学校の正面口から入ってすぐ、左手側にカフェテリアがあります。コーヒー+ドーナツのセットが2ユーロ、パスタ+ドリンクのセットが5.5ユーロなど、学生向けのリーズナブルな値段設定になっています。
座席も十分にあるため満席になることはほとんどなく、ここで食事やコーヒーを飲みつつ、そのまま自習をしてもOKです。ここでランゲージエクスチェンジをしている学生や、PCを持ち込んで作業している学生もいました。
図書館
図書館は学校の2階にあります。
街中にある図書館(大体混んでる)とは違い、校内の図書館は多くて3、4人くらいしか利用者がいなかったので、座席にかなり余裕がありました。
暖房がついていないため、冬はコートが必要なくらい寒いのと、お昼に一旦閉館してしまうのがちょっと不便ですが、本当に人が来ないし静かなので、集中して宿題や自習に取り組むには最適です。
所蔵されている本は語学学習用がほとんどですが、解説本や問題集などは発行年代的に少し古いものが多い気がしました。
オンラインツール(Moodle)
学校ではMoodleというオンラインツールを使用していて、PCやスマホアプリから自分の学習ページにログインして各種情報が確認できるようになっています。Moodleでは主に授業で使ったスライド資料がアップロードされたり、学習範囲に合わせた復習用の練習問題や、外部の学習サイトへのリンクが随時アップされたりなど、授業時間外で活用できるようになっていました。
重要なお知らせメールもMoodle経由で一斉送信されてくることがあるため、最初にしっかり自分の情報をMoodleに登録しておく必要があります。
建物
学校の最寄り駅は地下鉄のL3またはL5のVall d’Hebronです。バルセロナ全体でみると中心部からはちょっと離れていて北のほうにあります。駅から学校までは長めの坂道が続いているので、ちょっと息切れします…
学校の建物や内部は新しくありませんが、全体的に大学の別館みたいな印象です。1階から3階まであり、それぞれの階に何室も教室があります。毎朝清掃の人が入って掃除してくれているので、トイレなどもとてもきれいです。
自分のクラスの教室の場所は、ターム中はずっと固定されています。
ちなみにバルセロナの南にあるDrassanes校は、さらに広くて大学みたいだという話をクラスメイトから聞きました。
授業のスケジュール
9月下旬から1月中旬までの前期タームでは、月~木まで、1日約2時間強(9時30分~11時45分)の授業を受けました。(クラスのレベルや申し込み時の選択によって、授業の時間帯は異なります)
学校として1タームあたり130時間の授業をする必要があるため、祝日がある週の前後などは、不定期で金曜日にも授業がありました。
使用したテキスト
左はA2の教科書、真ん中は文法書、小さい2冊はリーディング用です。文法書はA1からB2の範囲までが含まれています。正直、4冊も買うことになるとは思っていなかったのでちょっと驚きました。
学校指定のテキストはすべて校内で購入することができます。(校内の1階に、入学後1週間前後だけオープンする本屋さんがあります)
登録時に学校に授業料を支払った際、教材費の名目の金額(30ユーロ)があったのですが、それにはテキスト代は含まれていなかったみたいで、別途各自で買う必要がありました。授業ではスライド資料などをプロジェクターで投影していたので、それが教材費ということだったのかもしれないです。
基本的には一番左のメインの教科書(Aula internacional Plus)に沿って授業が行われます。リーディング用の本は授業中は使用せず、各自自宅で読んで、12月~1月頃に本の内容に関する小テストを受けました。(余談ですがリーディング用の本、探偵ものなんですけどトリックや伏線が全くなく、話の展開も微妙で全然面白くなかったです…)
教科書に掲載されているビデオや音声は、Campus Difusiónというサイトに登録(無料)すると自宅でも聞けるようになりますが、教科書に掲載されている練習問題の解答はついていないので、学校で先生と答え合わせをする必要がありました。
文法書のGramática Básicaは、文法の解説+練習問題(+解答)がついています。各練習問題では「A1-A2」のように学習レベル範囲が書いてあって、自分のレベルに合わせた問題文を選択できるので、独学でも使用できます。
Gramatica basica del estudiante de espanol: A1-B2 – Nueva edicion revisada
学生の人数・国籍
私がいたA2のクラスの人数は25人くらいでした。当初は多く感じましたが、大学の授業みたいな雰囲気でした。
私のクラスメイトの国籍はヨーロッパを中心にかなりバラバラでしたが、昨今の情勢もあってかその中でもロシアとウクライナの学生数が多かったです。なお、その中で日常会話レベルの英語が話せるクラスメイトは6、7人くらいでした。
日本人はVall d’Hebron校全体では3人いましたが、学習レベルが全員違ったので、クラス内に自分以外の日本人はいませんでした。
授業内容
クラスの先生は担任制で、約4カ月間ずっと固定で授業を受けました。以前通っていたOlé Languagesと比べると、新しい文法や表現に対して何日も繰り返し学習したので、授業が進むスピードは比較的ゆっくりに感じました。
(Olé Languagesに通った時の体験談はこちら)
宿題は毎日あったので、宿題分だけでも最低1日20分~長い場合で1時間くらいは時間を確保する必要がありました。
クラス内の学生数が多いため、授業中に会話の練習をする機会があまりないのではと思っていましたが、隣同士でペアやグループになってロールプレイをする機会が毎日あったり、全員が発言できる機会を持てるように先生がなるべく均等に学生を当てているように感じました。
A2で習った主な文法は以下の範囲です。(比較と現在完了はOlé LanguagesのA1にいたときにも学んでいたので、学習範囲は少しかぶっていました)
- Comparar(比較):más/menos que, tanto como
- Pretérito perfecto(現在完了):he hablado
- Pretérito imperfecto(線過去):hablaba
- Pretérito indefinido(点過去):hablé
- Futuro simple(未来):hablaré
- Complemento directo/indirecto(直接目的語と間接目的語):lo、la、seなど
- Se impersonal(不定人称文?):se habla
A2レベルでは動詞の活用が一番の難関ポイントだと思います。(まだ全部覚え切れてません…)
A2終了時点で、現在・過去・未来の事柄がひととおり言える知識を学んだことになりますが、スラスラ使いこなせるまでにはまだ時間がかかりそうです…
追加の会話クラス
授業が始まってから数日後に、会話集中クラスに別途申し込みできるという案内があったので、追加で会話クラスの授業を受けることにしました。この会話クラスはEOIの在校生でなくても申し込みが可能です。
A2の午前クラスの場合は、毎週水曜日の授業後に会話クラスが受けられるようになっていて、費用は計10時間で25ユーロ(約4,000円)でした。授業は1回あたり約1.5時間×計6回ありました。
また、申し込みは先着順で、1クラス最低10人以上、最高15人までに設定されていました。(10人以上集まらない場合は開講されないそうです)
会話クラスでは、通常の授業で勉強した文法や会話表現を中心に、他のクラスメイトとペアやグループになって会話やゲームをしました。最初はあまり会話クラスを取ることにあまり乗り気でなかったのですが、学んだ文法の復習にもなったのと、学習意欲が高いクラスメイトと仲良くなれた機会でもあったので、結果的にこの会話クラスに通って良かったと思います。
また、会話クラスの先生は通常の授業とは別の先生だったため、一度習った文法でも改めて別の解説を聞くことができてとても役立ちました。
試験について
前期ターム中は、中間試験のようなものが2回と、最終試験が1回ありました。
最終試験では、各カテゴリーで50%以上、トータルで65%以上とればAPTO/APTA(合格)で、2月から始まる後期タームから上のクラスに申し込みができるようになっています。(ボーダーラインのパーセンテージはレベルによって違うかもしれないです)
合格していない状態で後期も学校に通う場合は、同じレベルのクラスをもう一度繰り返すことになります。
最終試験の点数が既定のパーセントにギリギリ満たない場合、中間試験の結果によっては合格になることもある(?)みたいな説明を受けました(うろ覚え)。
中間試験では筆記とリスニングのみでしたが、最終試験ではクラスメイトとペアになって行なう口頭試験もありました。なお、最終試験の数週間前に、クラスメイトの前で一人ずつプレゼンテーションをする機会があり、そこでポイントが高かった学生は口頭試験が免除されていました。
中間試験ではそれなりに問題が解けていたものの、最終試験はかなり難しくて手ごたえが全く無く、不合格になる悪夢を何度か見たくらいヒヤヒヤしていましたが、なんとか無事にA2を修了することができました!!
最終試験の結果は、テストを受けてから10日後くらいにメールで送られてきました。実際に私が受け取ったスコアはこちらです。
Notas del examen(試験の成績)とNotas del curso(コースの成績)がそれぞれどう影響しているのか?はよくわかっていませんが、左からリスニング、読解、文法、記述、口頭で各20点、合計100点の配分です。
ここで10点未満のものがあると合格できません。トータルで65%(65点)は超えているので一応通過はしたものの、赤字になっているところの項目(13点以下)はそのカテゴリ内での65%が取れていないので、私の場合は会話とリスニングが弱点です…
ちなみに実は試験中、とあるヨーロッパの国の学生数人が、テストの直前に机や指の間にメモを書いたり(!)、試験終了間際に同じ国の学生に母国語で解答を聞いて書き写したり(!)など、いわゆるカンニングをしていました。学生は普通にみんな大人だし、中には大きな子供がいる年齢の人もいましたが、特に悪びれる様子もなく、文化の違いに驚きました…(他の国の学生もドン引きしてました…)(先生はめちゃくちゃ怒ってました)
試験後の手続きの流れ
試験結果を受けとった翌日から、2月スタートの後期タームの申し込みが始まります。専用ページからオンラインでの手続きが必要ですが、最初の申し込みの時と同様、受付時間がめちゃくちゃ短い(24時間、または14時間しかない)ので要注意でした。
学校のトップページの「MATRÍCULA I NOTES」のリンクから手続きに進みますが、ログイン情報がわかりにくく、スムーズにアクセスできなくてちょっと焦ったので、備忘録として以下にまとめます。
- Usuario:生年月日(dd/mm/yyyy)(※スラッシュも必要)
- Contraseña:NIE(※ただし最後についているアルファベットは除く)(もしくはパスポート番号)
- Contraseña Personal:「Recordar Password」からパスワードをリセットする場合、NIEの最後のアルファベットは除く
ただ、後期は通わないという学生もいるので、在校生優先で正式な申し込みが終わった後、席に空きが出たところに新入生が入れる流れになっていました。
EOIに抽選で入れる確率(2023-2024)
Vall d’Hebron校では、新入生として申し込みをした場合、抽選に当たった人と待機している人(繰り上げ当選待ち)のリストが公表されます。この情報をもとに、レベルごとの申し込み人数を算出して、実際どれくらいの確率で入学可能だったのかを調査してみました。
2023年9月入学(前期)の場合
レベル | 当選人数 | 申し込み人数 | 倍率 |
A1 | 60 | 80 | 1.3 |
A2 | 45 | 79 | 1.8 |
B1 | 35 | 49 | 1.4 |
B2.1 | 17 | 18 | 1.1 |
B2.2 | 6 | 6 | 1.0 |
2024年2月入学(後期)の場合
レベル | 当選人数 | 申し込み人数 | 倍率 |
A1 | 25 | 35 | 1.4 |
A2 | 5 | 36 | 7.2 |
B1 | 23 | 39 | 1.7 |
B2.1 | 1 | 10 | 10.0 |
B2.2 | 9 | 9 | 1.0 |
C1 | 9 | 9 | 1.0 |
前期も後期もA1~B1までは申し込み人数が多かったです。逆にB2以上であれば、当選する確率が高いことがわかりました。(後期のB2.1の倍率はすごいことになってますが…)
後期のB2.1の当選人数が極端に少ないのは、前期で2クラスあったB1の学生が、1クラスしかないB2.1に集約される関係で、席の空きがあまり出ないんだと思います。
なお、同じレベルで2クラスある場合は、申し込みのときに午前と午後のどちらのクラスを希望したかによっても倍率が変わってきます。上の表はクラスのスケジュールは問わず、あくまでレベルごとの人数から算出しています。
通ってみた感想
EOIに申し込みしたときの記事にも書きましたが、公立校ならではの費用(A2の場合は約4カ月で305ユーロ(約48,000円))がとても助かるのと、ゆったりめの授業ペースなのが私には合っていました。また、クラスメイトも基本的に期間中は入れ替わりが無く(途中から授業に出てこなくなる人は何人かいましたが…)、長期でスペインに滞在している人ばかりなので、クラスメイト同士が仲良くなりやすい傾向にあると思いました。
ただ、1クラスあたりの人数が、他の語学学校と比べて多いことがデメリットと感じる時もありました(学生の理解度に合わせた臨機応変な対応が難しいなど)。でも、授業の内容や進め方の満足度については、最終的には担任の先生との相性次第だと思います。
私の担任の先生は、文法の詳細はあまり解説しないタイプで、文法書の解説部分をそのまま読むことが多く、個人的には動詞の活用に関する注意点や正しく覚えるためのアドバイスなどを期待していたので、その部分は少し消化不良でした。
また、ほぼ毎日プリントの配布があったのですが、まったく使用しなかったものや、数週間前に配られたものを突然今日使うというケースがあったり、数週間前に提出したライティングの添削結果が試験日当日に戻ってきたりなど、そういったところでやり難さを感じたりもしました。
でも総合的に考えると、学費の安さやオンラインツールの利用、図書館とカフェが校内に併設されているなどの環境面のメリットも大きく、授業で学習できる範囲も満足できる内容だったので、スペイン語の勉強を始めるタイミングが合えばEOIはおすすめです。
↓続けてB1も通いました。